ミックスボイス

名前は聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか？ 
 
「高音発声といえばミックスボイス」ということで、YouTubeなどの動画コンテンツでもかなり人気のテーマですよね。 
 
近年は「ミックスボイスを習得するためにボイトレに通い始めた」という方も多く見受けられるほど、ボイトレ界に旋風を巻き起こし続けている存在です。 
 
実際に僕のレッスンを受講し始めたばかりの生徒さんにミックスボイスについて聞いてみると、「詳しくはわからない」「解説する人によって考え方が違う」という声が多くありました。 
 
まるで選ばれたものだけができる必殺技のようなイメージが広まっているのも事実です。 
 
そんな謎多き「ミックスボイス」について、今回はイチから解説していきます。 
 

そもそも声とは？ 

 
皆さんは地声と裏声の違いを理解していますか？ 
 
声というのは声帯の振動によってできた音と、その時に一緒に放出される息（呼気）でできています。つまり「声＝音＋呼気」というわけです。 
 
地声であっても、裏声であってもこの方程式に変わりはありません。 
 
では、地声と裏声はなにがどう違うのか？ 
それは、声帯の閉じ具合（声帯閉鎖）と共鳴に秘密があります。 
 

地声（チェストボイス）の場合

・声帯閉鎖：強い 
・共鳴：胸骨・口腔などを使う 
 

裏声（ヘッドボイス）の場合

・声帯閉鎖：弱い 
・共鳴：頭部（鼻腔・上咽頭など）を使う 
 
これが地声と裏声の違いです。 
 

じゃあミックスは？ 

 
高音域の発声にお困りの方の多くは地声と裏声の切り替え（換声）がうまくいかず、力んだ状態で喉を締めたり、ひっくり返ったような発声に悩まされていると思います。 
 
ミックスボイスというのは、地声と裏声の特性を理解し、それらをスムーズに移行させている状態を指します。地声と裏声どちらの特性も持ち合わせた発声状態だからこそ、地声のような声質で高い声を出すことができるわけです。 
 
それゆえに「ミックスボイス」と一言で言っても、出せる音域や個人個人のベースとなる発声状態によって、我々ボイストレーナーのアプローチの仕方が大きく変わるのです。 
 

ミックスボイスはもう出ているかも？ 

 
地声のような声質で高音域まで声を出せるというのは、ミックスボイスの強みの一つですが、それだけではありません。 
 
例えば、話し声と同じくらいの低い音域でも、裏声でよく使われる共鳴腔の響きをプラスしていけば、もうその時点でミックスボイスになっているのです。 
 
単純に高い声を出すためだけではなく、歌唱表現や会話のニュアンスとしてもミックスボイスを知らず知らずに使っているかもしれません。 
アニメキャラクターのモノマネやアパレル店員さんの甲高い呼び込み声などもミックスボイスの一種です。 
 
まるで必殺技のようなイメージがありますが、そうではありません。 
 
遠回りに思えるかもしれませんが、発声の基礎となる地声と裏声の強化をしながら移行（換声）の練習を続けていけばミックスボイスは出せるようになります。 
 
今の基本発声に足りないところがないか、今一度チェックしてみましょう。